■自殺防止対策
日本で初めてSNS相談が本格的に導入されたのが、2018年3月、厚生労働省自殺防止対策事業におけるSNS相談です。3月の自殺防止対策月間において、13団体が相談対応にあたりました。
全国SNSカウンセリング協議会でも、公益財団法人関西カウンセリングセンター、一般社団法人全国心理業連合会との統一アカウント「SNSカウンセリング~ココロの健康相談」にてLINE相談を実施、相談開始前には約15,000人の友だち登録がありましたが、相談最終日には約64,000人の友だち登録数となりました。この取り組みは、自殺念慮を持つ若者を顕在化させたとも言え、これに対応していくためにも、厚生労働省の作業部会でSNS相談事業のガイドラインがつくられることになり、委員として携わらせていただきました。
■教育分野
日本で初めて試行事業が実施されたのは、長野県教育委員会でした。中高生のいじめ・自殺相談として実施された結果を受け、文部科学省により全国の教育委員会において導入されることになりました。現在では、児童・生徒のいじめ相談等に限らず、児童・生徒が気軽に相談できる場所としてSNS相談が活用されています。
なお、国や自治体の枠組みに限らず、学校単位での導入がなされたり、教員のメンタルヘルスのためにSNSカウンセリングが導入されたりするケースもあります。教育分野の民間事業者(塾、予備校など)での導入も進んでおり、子どもたちの現状や心理状態を知るために役立てられています。
■様々な社会課題への対応
厚生労働省、文部科学省からはじまったSNSカウンセリングは、虐待、DV、ひとり親、望まない妊娠、ひきこもり、人権相談、性的マイノリティ、ヤングケアラー、アルコール依存、誹謗中傷など、国や自治体におけるSNS相談は、様々な社会課題に対応するために広がりを見せています。
現在では、SNS相談の応用として、メタバースやAIなどの新しいテクノロジーを取り入れることで、様々な社会課題により役立てる動きも始まっています。たとえば、ひきこもり相談においては、メタバースを活用することで他者とつながるきっかけを作り、社会に出る疑似体験を行ったりしています。
■産業分野
若手社員の離職防止や、ハラスメント相談、専門職向け相談など、働く人のメンタルヘルスを支えるためにSNSカウンセリングが導入されています。特に、コロナ禍においては、テレワークができないエッセンシャルワーカーの方々や、テレワークでストレスを抱えるビジネスパーソンに対するSNSカウンセリングが急速に拡大しました。
企業で急遽、発生したアクシデントに対する心のケアの一環として、SNSカウンセリングが導入されたケースもあります。また、モチベーションアップのためのSNSメンタルトレーニングが用いられることもあります。
■災害や事件・事故後の心のケア
災害や事件・事故後は誰でも大きなストレスを抱えます。心理カウンセラーがなかなか現地に向かえないような時でも、SNSを活用することですぐに相談できる体制を整えることができます。全国SNSカウンセリング協議会では、2018年6月には大阪北部地震、2018年7月には西日本豪雨、2019年10月には台風19号の心のケアとして、LINE相談を行いました。
SNSカウンセラーが話を聴くことで、行政や医療機関がパンクすることを防ぐことができます。また、特に災害後の被災地で起こる、「被災者が相談対応にあたること」を回避することができます。