国や自治体をはじめ様々な分野で導入されているSNS相談では、一定のトレーニングを受けた専門家や準専門家(ボランティア相談員)が、SNSを用いて相談にのっています。専門家による相談には、医師による医療相談、弁護士による法律相談、ファイナンシャルプランナーによる家計相談など、様々なものが考えられます。
全国SNSカウンセリング協議会では、心に悩みを抱えている相談者(当事者)やその関係者の方々に対し、心理カウンセラー等の心理の専門家が相談にのることにより、気持ちを和らげたり、破壊的な行動化を防いだりし、より建設的な気持ちや考えを促進することを、SNSカウンセリングと呼んでいます。
SNSカウンセリングでは、相談者が置かれている環境やそこでの出来事、個人的な感情や考えなどをお聴きしていくことになりますので、相談者が安心して相談できることが何よりも大切です。
SNSカウンセリングの特徴
SNSカウンセリングは「匿名」でかつ「会話」であるところに特徴があります。匿名性の高さはインターネット上での誹謗中傷など、悪い方向に利用されることもあります。一方で、個人的なことを話しやすくなり、信頼できる相手とタイムリーに会話をすることができれば、ひとりで思い詰めてしまったり、過激になったりすることも防ぐことができます。
SNSカウンセリングのメリット
1.相談することへのハードルを下げることができる
誰かに相談したいと思った時に、カウンセラーに予約を取り、カウンセリングルームに行き、事前のアンケートに答え、初めて会う人に悩みを打ち明けることは、案外勇気のいることです。日常的に用いているコミュニケーションツールを使って相談できるということは、日常会話の延長線上で気軽に相談できるので、大事になる前のちょっとした悩みをすくい上げることにつながります。
2.本音を打ち明けやすい
テキストだけの相談は、声を出す必要もなく、筆跡がわかったりすることもなく、どこの誰だかわからない状態で相談ができます。相手の反応を気にしながら話す必要もありません。本音を打ち明けやすいということは、誰にも話したことがない秘密を話しやすくなります。たとえば、自殺念慮、いじめ・虐待、性に関する相談などが語られるので、心理カウンセラーが対応することには大きな意味があります。
3.読み返すことができる
SNSカウンセラーとのやりとりが残るので、相談者自身で、後で読み返して考えてみたり、やってみようと決めたことを再確認したりすることができます。対面や電話での相談は心理カウンセラーが伝えたことが一過性のものとなりがちですが、SNSカウンセリングでは「SNSカウンセラーさんのあの言葉に救われた」「スクショして、自分だけのお守りとして見返します」などの声が聞かれることもあります。
SNSカウンセリングのデメリット
1.イメージしづらい
テキストでのやりとりは非言語情報がなく、情報量が非常に限られており、どんな重みで言葉を使っているかもわかりづらいため、相談者像を描きづらくなります。どんな悩みなのかを把握するのに、電話相談の倍くらいの時間がかかると言われています。相談者も、相談員も、思い込みを起こしやすいとも言えるので、相談者に安心して話していただくこと、相談員が広い視野を持っておくことが大切です。
2.テキストでのコミュニケーションが苦手な方は相談しづらい
会って話す時はコミュニケーションが取れる方でも、文字を入力する場合はうまく言葉が出てこないタイプの方もいらっしゃいます。また、相談者独自の単語や言い回しが多くなったり、絵文字やスタンプが多かったりすると、真意が伝わりづらくなります。心理カウンセラーであるSNSカウンセラーは丁寧にやりとりを重ね、相談者が何を伝えようとしているかを理解するようつとめます。
3.多くのことを扱いづらい
相談者の悩みは多くの要因がからみ合っていることもあり、複数の問題を抱えた相談者もいらっしゃいます。SNS相談においてすべてを扱おうとすると、時間がかかり過ぎたり、相談者が理解しづらくなったり、本質的な問題解決からずれていくこともあります。SNSカウンセリングでは、今回の相談での目標を明確化し、1回の相談で1つを扱うよう心がけます。
SNSカウンセリングの実際
相談者が安心してSNSで相談ができるよう、様々な配慮が必要です。このため、SNSカウンセリングはSNSカウンセラーひとりで行うのではなく、SNS事業者、システム事業者、SNSカウンセラーチームとで連携を取り行われています。
1.安心できるチーム対応
SNS相談は、チームでの対応を行うことで質の担保をはかります。相談対応時間には、相談者の対応を行うSNSカウンセラーと、相談全体をモニターするスーパーバイザーとでチームを組みます。スーパーバイザーは入ってくる相談を各SNSカウンセラーに割り振ったり、気づいた点をオンタイムでSNSカウンセラーに伝えたり、難易度の高い相談は対応を交替したりもします。
2.安心できる情報保護
誰にも打ち明けたことのない相談をするかもしれない相談者にとって、SNSで話した内容がどのように保存、保護されるかは心配なところです。SNS相談では、相談員個人のスマートフォンを使うことはなく、SNS相談専用のチャットシステムを使用することで、セキュアな環境に情報を保存し、個人の端末には情報を残さない形で対応します。チャットシステムを使うことで、相談の履歴の管理などもしやすくなります。
3.安心できるSNSカウンセラー
全国SNSカウンセリング協議会では、150時間以上の履修時間数を必要とする心理カウンセラー資格を保有している者に、SNSカウンセリングスキルを習得いただく形での「SNSカウンセラー認定登録制度」を設けています(認定登録名称:全国SNSカウンセリング協議会登録SNSカウンセラー)。加えて、「全国SNSカウンセリング協議会登録SNSカウンセラー」は定期的に研修を受け、資格更新の際も更新講習の受講が義務づけられています。SNSの先に犯罪者とつながるのではなく、安心できるSNSカウンセラーにつながることをめざしています。